お店を始める時に少量ではありますが、額縁メーカーより出ている規格品を少し仕入れました。元々在庫としてはたくさん持つつもりはありませんでしたし(持てない)、什器は少し凝りましたが、たくさんの量は入りません。まぁ、額縁屋の体裁をギリギリ保つくらいの量はあるのですが、少し偏ったチョイスをしてしまったみたいで、最初の在庫分はほとんど動いていません(悲)。
「珠二頭文(しゅ にとうあや)」という額があります。僕が10何年かに及ぶ額縁販売の経験において、とても気に入った額の一つです。たくさん売ってきたとまでは言えませんが、ここぞ、という時に実力を発揮してくれることが多かった額の一つです。この「珠二頭文」が廃番になるという連絡を受けました。別に当てつけの文章ではありません。(ほんの少し、1グラムくらいはそういう意味が入ってしまうかもしれませんが‥)本意としては単に好きな額が廃番になってしまって残念だ、ということです。
少し「残念」の意味が違ってくるのですけど、カスタムフレーム用のモールディングサンプルも大体500個くらい最初に用意しました。店舗の大きさや壁の面積から考えると、僕としては頑張っちゃったつもりでした。これにこそデザインや色、風合いに偏りが無いように入念にチョイスしたつもりでした。しかし、お店を始めて約5ヶ月、そのモールディングサンプルの中からけっこう廃番が出ているということじゃああ〜りませんか!これは痛いです。サンプルも大半は購入したものです(中には提供してくれるメーカーさんもありますよ)。廃番になるということは、サンプルとして壁に掛けておけなくなるということです。「これがいいね」とお客様に選んでいただいても、後に実はそれは廃番でした、ということは起きてはいけないことなのです。額縁の完品ならばたとえその種が廃番になったとしても、そのもの自体は1枚の額縁ですから使用できます。在庫で揃えている完品の廃番は、今後追加で同じ物が用意できないということなのです。しかし、モールディングの廃番はそのサンプル自体も利用価値が無くなってしまうということになります。なにか特殊な使い方を考えられる方は別として、ゴミになってしまうのですね。サンプル用に購入したものが、1度もサンプルの用を為さずにゴミとなる。これは残念なことですし、どこか釈然としないところもあります(かなりあります)。いわゆる(需要と供給に基づいているのでしょうが)企業側の論理を強く感じます。僕のガラケーの中に収められ、近い将来にスマホに変えた時に、消滅する運命から逃れられない「着うた」のようなものです。
話は変わってレコードやCD には廃盤が起こります。本なら絶版ということです。これは避けられない宿命だということは(こっちは何故か)納得できます。これも需要と供給に基づいて起きていることだと思うのですが、まぁCD とモールディングサンプルは用途も扱う立場も違うので比較はできませんから、同列には語れませんけど、CD(この場合はレコードの方が説得力は高いかな)とか本の場合は廃盤とか絶版が時として、それがいい方向に回る可能性がありますよね。今風に言うとプレミアが付くというのですかね。もちろんそういう商品(作品)には何らかいろいろな付帯条件があってこそ価値が生まれるということなんでしょうけど、額縁に関して言えば廃番になったからといって、数少なく残ったその商品にプレミアが付いた、なんて話は聞いたことがないですし、多分起きないでしょう。モールディングサンプルの方は少量の棹在庫にプレミアが付くということは理論上は起こり得るかもしれませんが、サンプルそのものに価値が付くことはないですな。
で、廃盤の方の話なんですけどね。
僕が高校生の頃聴いていた音楽で、THE MODS というバンドがあります。とんと最近THE MODS の音楽を耳にする機会もありませんが、彼らは今でも現役です。ブログも更新されています。久しく聴いていませんでしたが、先日ふとお家でCD を見つけたので聴きました。僕自身はパンクでもロカビリーでもロックでもありませんが、THE MODS は高校生の頃かな、一時期けっこう聴いてました。THE ROOSTERS とTHE MODS を当時交互に聴いてたような気がします。見た目不健康と内面不健康を交互に聴いてバランスを取る、という感じでしょうか。あくまで聴いていた音楽の話です。
で、THE MODS のCDを見て思ったのです。これけっこうデザインがカッコいいな、と。
実は最近ビンテージレコードを額装するという注文をいただく機会がありまして、ちょっと画像はお見せできないのですが、なかなか上手く仕上がったかな、思うところがありました。あ、このくらいのことはやれるんだという自分を発見したので、よし、店内の額装サンプルとしてTHE MODS のCD を額装してみようと思ったのです。ちょっとカッコよく、それも、THE MODS のファンに響くようなものにしようと…。まぁあんまり大げさなものにはしませんけど。
しかし、始めてみて問題がありました。それこそ20何年ぶりくらいに開いたCDケースですがのですが、ケースが破損しており、パッケージの退色もかなり進んでいます。CD は聴けましたが、ケースは×です。額装は文字通り見た目勝負です。このCD ケースは額装サンプルに使えません。う〜ん、気分は作る気になっているのに、肝心の物が使えない。どうしようかな〜。しかしな~、これを機会にTHE MODS のファンが俺のも額装してくれよ、とお店に来てくれるかもしれないと思い、ちゃんとしているCDを探そうと決意しました。
そこでまず名古屋市内のほぼ全店の中古CD 店に問い合わせました。THE MODS の「BLUE-MIDNIGHT HIGHWAY」というCD は置いていますか?と。しかし、何故かどこにも置いていないのです。しかもです、驚いたことにTHE MODS の音楽ジャンルを聞いてくる店員さんがいたのです。僕としては、…。もちろん大抵のお店は「今、当店ではTHE MODS は置いていません。」という返事でした。でもいくつかのお店には中古CD店で働きながらTHE MODS を知らない店員がいる!これは僕としては大きなショックでした。僕もここ20年くらい聴いていませんので、大きなことは言えないのですが、だいたいにして中古CD 屋の仕事ってのはつまるところはTHE MODSのCDを、THE MODSを探しにくる人に売ることと違うのかい?と聞き返したくなったくらいです。つまり、他店で現在置いていない、という状況は、入荷すればすぐに売れてしまうということの繰り返しであるということであ~ると(笑)。え〜、繰り返しますがTHE MODS はまだまだ現役です。好き嫌いは激しく分かれるところかもしれませんが(THE ROOSTERS よりは聴きやすいでしょ)、けっこうカッコいい曲多いですよ。今となれば初期のTHE MODSしか聴いていないということになる僕ですけどね‥。THE MODS をちゃんと聴いたのは、高校生の頃、同じ空手の道場に通っていた笠井くんから借りて聴いたのが最初だったと思います。「TWO PUNKS」とか「激しい雨が」とかTHE MODS の王道の曲を好んで聴いていた記憶があります。関係ありませんが、僕も笠井くんも岩田成志先生の弟子(道場に通っていたということね)なので、つまりは船越義珍の孫弟子ということになります。これはちょこっとだけ話のネタになることなんですよ。
話を元に戻して、なかなかCD が見つからないということで、ネット通販で手に入れようと思い、ゲットを試みました。ここでまたトラブルに見舞われます。僕の確認不足によるところが原因なのですが、ゲットしたCD がなんと復刻の廉価版で、薄い貧弱なCD ケース入りの物が届きました。これでは様になりません。そしてCD本体 のデザインも正規のものと全然違う味気ないものでした。CD ディスク自体は元々持っているものを使えばいいのですが、このケースを額装するのでは額装をする者としての美意識が問われます。もちろんCD ケースの額装ということ自体が「貴重な物」感が薄いことは事実なのかもしれませんが、そこを額装次第では「おっ!」という物にできるのだということが、この額装の目指すところです。貧弱さを感じさせる物であってはいけないと思うのです。
この「BLUE」というアルバムは1985年に発表されています。僕のCDのクレジットは1990年になっています。これが最後の再販で廃盤になったようです。そして1995年に発売された復刻版(今回ネットで購入した物)は、CD 本体のデザインまでは復刻されていなかったのです。トホホ。確かに、通販サイトでは確かにCD選書(廉価版復刻CDシリーズ)として画像が載っているので、誰にも文句が言えません。僕のチェックが足りなかったのです。しかし納得できる仕上がりにするためには中古であってもやはりオリジナルをゲットしなければなりません。
再びネット通販で今度はちゃんと1990年販売のオリジナルの物を探しました。(前編的終わり)