えー、またちょっと長くなるような気がしております。
村上春樹という日本のみならず世界的に著名な小説家がいます。その中でも熱狂的な読者は「ハルキスト」と呼ばれることを皆さんもご存知だと思います。
僕は恥ずかしながら、村上春樹の作品を読んだことがありませんでした。いや、あることはあったのですが、「国境の南、太陽の西」という作品です、途中で挫折してしまったのです。多分、1/3くらいのところでこれ以上はいいかな、と思ってやめてしまったのです。僕は特に読書が趣味というほどたくさんの本は読みませんが、それでも多少は読みます。佐藤泰志という作家にはとても強い思い入れがありますし、原寮という作家もいわゆる「愛読」をしていました。去年の浪人生活の折には10冊くらい「鬼平犯科帳」「剣客商売」も読みました。面白かったです。その他、愛読まではいかないと思いますけど、佐藤多佳子とか恩田陸とか東野圭吾などを読みました。とても面白かったです。面白いと感じる本はちゃんと最後まで読めます。でも「国境の南、太陽の西」を挫折しました。結構昔のことで、20年くらい前のような気がします。それ以来、村上春樹の作品は読んだことがありませんでした。挫折が少しコンプレックスになって敬遠していたのです。
村上春樹という人は作品の出版の際は常にNHK のニュースでも取り上げられますし、なんと言っても村上春樹がノーベル文学賞を受賞するかというのは、毎年その時期の風物詩になってますよね。まぁ、そのくらい日本の小説家の中でも別格の存在感を持ち、また扱いを受けている人なのは間違いないと思うのです。なぜならば、作品が多くの人の支持をされ、また何年かおきに発表される新作が読者の要求(欲求)に応えているからだと思うのです。世に問い、成果を得る。これをもう40年くらいなんでしょうか、ずっと続けてきている。すごいことだと思うのです。世の中様々な職業があり、40年現役の方はもちろんたくさんいらっしゃいます。しかし、40年間思想を元にした小説作品を発表し続け、常に世間の話題のトップに上がるというのは、並大抵のことではなく、空前絶後というか現代日本社会においては唯一無二の存在なのかなとも思うのです。
小説を書いて出版することが「世に問う」行為ということであれば、純真堂の開業も「世に問う」行為には違いない。純真堂は世間になかなか気付かれませんが、村上春樹はなぜこうまで世間に支持されるのか。僕は再び村上春樹作品に挑みました。3ヶ月くらい前のことです。
僕は恥ずかしいのですが学生の頃からなにげに写真を撮るのを趣味としておりまして、卒業してからも同好会に参加したりしていました。ここ何年かはご無沙汰していますけど、また考えたいなとも思っております。
で、スマホ全盛の昨今。皆さんいわゆるSNS にたくさん写真を投稿されますが、その画像を実際にプリントされるまでにはなかなか至らないと思います。純真堂は時代の流れに取り残された最後のオアシス、額縁店です。写真の額装を生業としているお店です。写真が撮れたらプリントしてみませんか。
ここに額装してある写真は僕が撮ったものです。今日び(きょうび)なかなかプリントには至らないと先に書きましたが、それならばと思い、プリントしてみました。で、プリントしたら額装です。やってみて、お、いいじゃんて思いました。やっぱりプリントして額装すると全然違いますね。スマホとかパソコンの画面上で見ているものとは、物としての存在感が違いますし、作品に「出会う」感じがします。自分がかつて撮った写真なのに「出会い」があるのです。結局、自画自賛で恥ずかしい限りですけど、使っている額縁は現役バリバリ。本物(モノホン)です(笑)。
この写真に写っているもの。見れば分かってもらいたいのですが月です。お月様。早朝の港湾で撮りました。 場所はなんと新潟県です。
ここで村上春樹の話に戻ります。僕はこの何ヶ月かかけて「ねじまき鳥クロニクル」と「1Q84」を読みました。「騎士団長殺し」でないところがミソですが、どちらも村上春樹の代表作と言って差し支えがないと思います。なかなか文章量が多いので読み終わるのに時間がかかりましたが、でも以前のような「挫折」は無し。単に読書に長時間割ける暇が無かったので時間がかかってしまったという感じです。どちらの作品も結びのところで少しアレレっていう物足りなさを感じないわけではありませんでしたが、文章全体に纏われている縦横無尽な想像力とでもいうんでしょうか。膨大な量の「比喩表現」にそれぞれ醸し出される「華」は「ハルキスト」を捕えて離さない「ソレ」なのかなとも思いました。面白かったです、とても。ノーベル文学賞云々は正直あんまり関心がありませんが、長ければ長いほどその世界に浸って文章を愉しむという意味でいえば幸福な時間を過ごしました。
で、この「月」の写真ですが、「1Q84」を読まれた方ならと思い出されると思いますが、物語の中で月はけっこう重要なアイテムとして使われています。白昼の月の描写もあります。今回何枚か写真をプリントしてみようと思い立ち、画像を選んでいた中でこの「月」の画像が目に止まりました。僕は「雲」の写真はよく撮ります。しかし、かつて明るい空に浮かぶ月は撮ったことあったかしらん?という感じでしたが、気持ちにどこか触ってくるものがあったのでプリントしました。「1Q84」を読んだ直後でなかったら選んでいたかどうかは考えないでおきましょう。物語の中、主人公たちが見上げる月の「ぽっかり感」はこんな感じなのかどうかは皆さまがそれぞれ思うところでしょうが、物語は別として、自分としてはこの写真なかなか良いんじゃないかな、と思っています。まぁ自画自賛を笑ってちょすちょす。
さて皆さんも写真を撮ったらプリントして額装しましょう。「出会い」がきっとありますよ。
SNSということで純真堂もInstagram 始めました。ご覧になってください。
ではまた。
posted by 杉山 真也